噂に聞いていた通り、そこはゆうに百名は超える奴隷がいました。
奴隷は例外なく妙齢の娘たちです。
奴隷たちの顔色も、纏う雰囲気も様々です。
誇りを失わずに、胸を張ってしゃんとしているものもいれば、首を垂れ、肩をすぼませて地面を見つめている者もいました。
変わらないのは、拘束具、でしょうか。


奴隷たちの首元には、手首ほどの太さのある、重い金属製の首輪。
両の手首には、数多の奴隷の汗と涙を吸い込んだ、自由を奪うための木製の枷。
足首にも鎖。

その先には、意思を持って引きずらなければ動かない、鈍色の鉄球が括り付けられているのです。
それらの枷は――すなわち首輪、手枷、足枷は――手が自由に使えたならば、簡単にはずせたであろう、簡単な鍵で結えられています。
見えていて、仕組みがわかり、しかし自分で外すことはできません。
この、もどかしく、やるせなく、打つ手のない無力さを奴隷たちに味合わせることそのものが、トトノ商会の狙いであるのだそうです。

奴隷商人として大成するための武器として、ひとの心の機微にまで気を配っていたのですね。
そんな、繊細な雰囲気に気を配る方々のお店です。
すぐに、わたしの姿を見つけて、とんでいらっしゃいます。
――いらっしゃいませ。今日は何をお探しでしょう?
トトノさんが、わたしの姿を認めて、とんでいらっしゃいます。
軒先でおもちゃを売るかのような気楽さでひとを売買できるようになるまでに、何年の修行を積まれたのだろうと、いつも思います。
まあ、それを言うのであれば。
女の子を『いじめる』お手伝いをしているわたしの方が、よっぽど罪深いのですけれど。

コメント