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――死ぬんじゃないか、とお思いですか?

ひょっとして、あれがそうなのでしょうか。

噂には聞いていたのです。

トトノ商会には『ハレム』がある、と。

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【さらし台(トトノ商会仕様)】

恐怖が半分、怖いもの見たさが半分でした。

わたしが力を込めると、鉄の扉はわずかに軋みながら、ゆっくりと開いたのです。

目に飛び込んできた光景。

木製の板に開いた穴に、首と手を括られている女性たち。

同じ機能を持った木製のそれが、ずらりと横並びになる様。

数の暴力、という言葉が思い浮かびました。

同じ思想で作られたものがずらりと並んでいる様は、圧巻です。

なにより、ひとを拘束するための機能のみに特化した機能美が訴えかける、重々しさ。トトノ商会のハレムに拍車をかけているようでした。

拘束された彼女たちは、極端に痩せています。

あらわになった脇腹は、骨がくっきりと浮かび上がっています。

手首も細く、普通の手枷なら抜け落ちてしまいそうなのに、彼女たちの手首はしっかりと結えられています。

あらかじめ、痩せ細った奴隷たちを拘束するために、一回り小さめに作られているようでした。

でも、よしんば枷から抜け出せたとしても、ほとんど骨と皮だけの彼女たちが、満足にあるくことが出来るでしょうか……。

――いま、断食中なんですよ。

場違いに軽く、陽気で、無邪気な声が、『ハレム』に響きました。

――死ぬんじゃないか、とお思いですか? 大丈夫。人間、そう簡単には死なないんですよ。

場違いな挨拶。

トトノさんが手を挙げると、下男が――というより、ほとんど獄卒のような人相の方が――鞭を振りかぶりました。

しなる鞭の動きに、わたしの目は釘付けになりました。

臀部を打たれ、身悶えする奴隷たち。

束の間、奴隷たちのひとりと視線が交差しました。

その瞬間。

わたしは心が震えるのを感じました。

稲妻に打たれたような衝撃、という言葉は、誇張でもなんでもないのだと、わたしは思い知りました。

彼女は全身が汚れていて、全身が細やかなな裂傷や打撲で傷だらけです。

くしゃくしゃの髪はあまりにも脂ぎっていて、本来の色もわからない程です。

苦痛に歪む表情も、苦痛に悶える身体も、疲れ切って悲鳴すらあげられない息づかいも、どこもかしこも汚れています。

でも、そこだけは。

彼女の瞳だけは、汚れていなかったのです。

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